大前提:市役所の仕事は、部署でまったく違う
最初に強く言いたいのは、市役所の仕事は一括りにできないということです。
市民課、税務課、福祉課、子育て支援、道路や公園の管理、施設運営、総務、人事、財政——部署によって仕事はまるで違います。窓口が中心の部署もあれば、外回りが多い部署も、デスクワーク中心の部署もある。しかも数年ごとに異動があるので、「市役所ではこういう仕事をする」と一言で言うのが、そもそも難しいのです。
僕自身、性質のかなり違う2つの部署を経験しました。順番に書きます。
福祉課・生活保護のケースワーカー:責任の重さを知った
一つ目は、福祉課で生活保護を担当するケースワーカーでした。
具体的な相談内容はもちろん書けませんが、仕事の性質だけ伝えると——これは「事務仕事」という言葉から想像するものとは、まったく違いました。制度に基づいて正確に判断しなければならない一方で、目の前にいるのは、それぞれ事情を抱えた生身の人です。マニュアルどおりに処理すれば終わり、という仕事ではありませんでした。
一つの判断が、人の生活に直接影響します。だから、法律や制度の正確な理解が求められるし、書類の一字一句にも神経を使う。「正確であること」の重さを、この部署で初めて肌で理解しました。学生の頃に思い描いていた"のんびりした公務員"像は、ここで完全に消えました。
同時に、人と深く関わる仕事でもありました。相手の状況を理解して、丁寧に説明し、制度につなぐ。人と接するのが苦手だときつい——というのは、この経験からの実感です。
生涯学習課:市民と一緒に何かをつくる仕事
二つ目は、生涯学習課でした。ここは福祉とは性質が変わって、講座やイベントの企画・運営、施設に関わる仕事など、地域の人と一緒に何かをつくっていく色合いが強い部署でした。
ここでは、市民や関係者との打ち合わせ、他部署との調整、会議——コミュニケーションが一日の大きな割合を占めていました。「公務員=パソコンに向かう仕事」というイメージとは、かなり違います。イベントが成功して、参加した方から「ありがとう」「楽しかった」と言ってもらえたときは、この仕事をしていて良かったと感じる瞬間でした。地域に貢献している実感を日々持てるのは、公務員ならではの魅力だと思います。
「定時で帰れる」は、時期と部署による
「公務員は毎日定時」というイメージも、実際は部署と時期によります。繁忙期には残業が続くこともあり、イベントや対応事によっては休日に動くこともありました。年度末や大きな事業が動く時期は、単純に仕事量が増えます。「公務員だから楽」は、働いてみると少し違う、というのが正直なところです。
ただ、繁忙期と閑散期の波はあっても、民間と比べれば働き方のコントロールはしやすかったとも思います。育児や介護など事情がある人にとって、制度が整っているのは間違いなくメリットです。
異動で仕事が根本から変わる、という経験
福祉のケースワーカーから生涯学習へ——この2つを並べれば分かるとおり、市役所では異動で仕事が根本から変わります。新しい部署では一から覚え直しで、最初は大変です。
ただ、これには思わぬ副産物がありました。「知らないことを素直に認めて、短期間でキャッチアップする力」が鍛えられたのです。畑違いの業務に放り込まれても、ゼロから学んで立ち上げる。この力は、エンジニアになって新しい技術を学ぶ今、そのまま活きています。
市役所職員に向いている人・向いていない人
9年の経験から、向いていると感じたのは——人と話すことが苦にならない人、コツコツ進められる人、ルールや正確さを守ることが苦じゃない人、地域に貢献したい気持ちがある人、そして責任感のある人です。
逆に物足りなさを感じやすいのは——成果が給与や昇進にすぐ反映される環境を求める人、変化の大きい仕事を好む人、新しいことに次々挑戦したい人。正直に言うと、僕自身は後者寄りでした。だからこそプログラミングと出会って、「もっと成長したい」という気持ちが抑えられなくなっていったのだと思います(辞める決断に至った経緯は別記事に書いています)。
まとめ
市役所職員の仕事は、「楽そう」「安定している」だけでは語れません。生活保護のケースワーカーのように責任が重く、人の生活に直結する部署もあれば、生涯学習のように市民と一緒に何かをつくる部署もある。部署でまるで違い、繁忙期には残業もあり、その一方で地域に貢献できるやりがいと、幅広い経験という財産があります。
もし市役所職員を目指すなら、良い面だけでなく、こうした実態も知った上で選んでほしいと思います。そのうえで「合っている」と思えたなら、公務員は本当にやりがいのある仕事になるはずです。実際に働いて感じた良かったこと・後悔したことは、別記事にもう少し踏み込んで書いています。