1ヶ月目:自由より先に、不安が来た

フリーランスになって最初に感じたのは、自由ではありませんでした。不安でした。

本当に続けられるのか。次の案件はあるのか。来月の収入はどうなるのか。公務員時代は毎月決まった日に給料が振り込まれ、ボーナスもあり、見通しが立っていました。それが消えた状態を、初めて実感として味わいました。

そして1ヶ月目に特にきつかったのは、その不安を話せる相手がいないことでした。会社員なら同僚に愚痴を言えるし、上司に相談もできる。フリーランスは基本的に一人です。抱えたまま、どこにも出せませんでした。

返信文ひとつに、30分かかっていた

具体的に「できていなかったこと」を書きます。1ヶ月目の僕は、クライアントへの返信文を1通書くのに、30分かかることがありました。

「この言い方は失礼にあたらないか」「この質問の仕方で伝わるか」——一文ごとに手が止まる。相手からすれば単なる業務連絡なのに、こちらは毎回、真剣に悩んでいました。

作業時間の見積もりが、まったくできなかった

「この修正、どれくらいかかりますか?」と聞かれても、答えられませんでした。3時間なのか3日なのか、感覚がまるでない。とりあえず余裕を持って答えるしかなく、その見積もりが正しいのかどうかも分からない。この不確かさが、地味にストレスでした。

一番の失敗:自己解釈で進めて、「思っていたのと違う」

1ヶ月目で一番痛かった失敗は、技術的なミスではなく、コミュニケーションのミスでした。

「この機能を実装してほしい」という依頼を受け、曖昧な部分を確認しないまま、自分の解釈で進めてしまったのです。完成して提出したら、返ってきた言葉は「思っていたものと違う」でした。

このとき理解しました。曖昧なまま進めるのは、スピードを優先しているようで、実は一番遅い。「確認してから進める」「分からない点はその場で聞く」——これは技術力と同じか、それ以上に重要なスキルです。そして「分からないことを正直に言う勇気」こそが、信頼を守る最短ルートでした。

3ヶ月目:流れが「見える」ようになった

3ヶ月ほど経つと、はっきりと変化を感じるようになりました。

返信が、パターンで書けるようになった

30分かかっていた返信文が、自然に書けるようになりました。理由は単純で、型ができたからです。感謝を伝える、要点を書く、確認事項があれば聞く。この3つの流れが体に入ると、悩む時間がほぼゼロになりました。

見積もりに、勘が働くようになった

「この規模の修正なら、だいたいこれくらい」「この機能は見た目より複雑になりそうだ」——こういう感覚が、少しずつ出てきました。精度が上がると、スケジュールの調整もスムーズになり、クライアントとのやり取り全体が落ち着きます。

焦りの質が変わった

毎日「本当に続けられるのか」と考えていた1ヶ月目に対して、3ヶ月目には「今日の仕事をこなして、次の案件を探せばいい」と思えるようになりました。安心したわけではありません。ただ、漠然とした恐怖が、具体的なタスクに変わった。この差は大きかったです。

変わらなかったもの

正直に書くと、収入の不安だけは3ヶ月経っても消えませんでした。「次の案件があるか分からない」という感覚は、たぶんフリーランスを続ける限り、付き合っていくものなのだと思います。慣れることはあっても、なくなることはない。ここは期待しない方がいいです。

3ヶ月で分かった、技術力より効くこと

意外だったのは、信頼を作るのが技術力ではなく「当たり前のこと」だった点です。

返信を早くすること。すぐ答えられなくても、「確認しました、○日までに回答します」の一言を先に返す。これだけで信頼度がまるで変わります。

納期を守ること。「この人に頼めば予定通り届く」という安心感が、次の依頼を呼びます。もし間に合わないなら、早めに言う。遅れること自体より、遅れを黙っていることの方が、はるかに信頼を失います。

分からないことを正直に伝えること。「できます」と言ってできなかったときのダメージの方が、「これは難しいです」と最初に言うより、ずっと大きい。

技術は後から追いつけます。でもこの3つを外すと、技術があっても次はありません。

孤独への対処として、実際にやった2つのこと

1ヶ月目の孤独は、想像以上でした。同僚と昼食を食べることも、雑談することもない。詰まったときに「ちょっといいですか」と言える相手が、物理的に存在しない。

やったことは2つです。ひとつは、週に1回、SNSで学習記録を発信すること。見てくれる人がいなくても、「外に出している」という感覚だけで、孤独が少し薄まりました。もうひとつは、オンラインのエンジニアコミュニティに入ること。同じ状況の人がいると知れるだけで、気持ちがずいぶん軽くなりました。

孤独は精神論では解決しません。仕組みで対処するしかない、というのが3ヶ月やってみた結論です。

3ヶ月目以降に、見えてきた次の課題

流れが見えてくると、次の課題が出てきます。今まさに向き合っているのは、この3つです。

単価を上げること。最初の案件の単価のまま止まっていると、いつまでも同じ規模の仕事を回し続けることになります。「この実績を根拠に、次はもう少し上の案件に応募する」という発想が、3ヶ月目あたりから芽生えました。

継続案件を作ること。一度信頼してもらえたクライアントからの継続依頼は、新規開拓よりはるかに効率が良い。だからこそ「初回に丁寧に対応する」ことが、そのまま次につながります。

技術の幅を広げること。Laravelだけでなく、Vue.jsやReactを触れるようになると、応募できる案件が増えます。3ヶ月目からフロントエンドも少しずつ学び始めました。

まとめ

最初の3ヶ月は、想像していたよりずっと地味で、不安の多い時間でした。

1ヶ月目は、返信文に30分かかり、見積もりができず、自己解釈で進めて失敗し、相談相手もいませんでした。3ヶ月目には、返信は型で書けるようになり、見積もりに勘が働き、焦りが具体的なタスクに変わりました。収入の不安だけは、変わらず隣にあります。

もしこれから始める人がいるなら、伝えたいのはひとつだけです。1ヶ月目にうまくできないのは、当たり前です。それは向いていない証拠ではなく、まだ回数を踏んでいないだけ。返信文に30分かかっていた僕でも、3ヶ月で型ができました。

フリーランスは「なった瞬間に自由になる」ものではなく、「続けることで自由を作っていく」ものだと、今は思っています。